蒼 穹
10. ヘリコプターで夜遊びなんて
その晩遅くに、電話が鳴った。ぐっすり眠っているジョージ少年を横目に甚平は受話器をとる。
「もしもし……え……ほんとに!? わかった、すぐにそっちへ行くよ。どこで合流しよう、うん、うん、オッケー、じゃ」
考え事をしながら受話器を置き、ふと顔をあげると、少年の目と目が合った。
自動車修理工場のシャッターに掛けたプレートは『本日終了』から『臨時休業』に変わった。そして工場脇のガレージから古い車が出てくる。車もここ十年、新しいものは作られていない。古いものを修理を重ねて大事に使っているというわけだ。大量消費の時代は遠く過ぎ去っていた。
車は暗い市街地を走り抜け、やがて着いたところは、空港だった。無駄にしか思えないただっぴろい空港の端っこにヘリコプターが着陸している。車はその傍らまで行って止まり、ドライバーは駆け寄ってきた空港職員に車を託した。
「さあ降りるんだ、ジョージ。あれに乗るぞ」
ジョージ少年はおそるおそる車を降りてヘリと甚平とを交互に見た。
「――スナック『ほっきょく』に行くんじゃなかったの?」
「あーほっきょくほっきょく。いいから早く乗れ」
「でも! ヘリコプターで夜遊びなんて! 燃料がもったいない!」
「ばーか」甚平はにっと笑って手の甲で少年の腕を叩いた。「大事な燃料はこういう時のためにとってあるんだって」
と、ヘリのコクピットから怒鳴り声が飛んできた。「なにやっとんじゃ! はよ乗らんかぃ!!」